前処理工程について 16

アルマイト処理(陽極酸化処理)は、アルミニウム表面に人工的な酸化皮膜を形成し、耐食性や耐摩耗性、装飾性を向上させる表面処理技術です。
しかし、良好なアルマイト皮膜を形成するためには、アルマイト処理そのものだけでなく、その前に行われる前処理工程が非常に重要になってきます。今回はその前処理工程について書いていきます。
まず 前処理工程行く前には前回の「コラム15」にあるラッキング作業に始まりその次にラインの中に入っていくのですが、前処理が不十分な場合、皮膜のムラやシミ、染色不良などの品質不良が発生するため、各工程を適切に管理する必要があり仕上がりにも影響してきます。
まず最初の工程は「中性脱脂」です。
アルミニウム製品の表面には、加工時に付着した切削油やプレス油、手の脂などの汚れが存在します。これらを除去するために、アルカリ性の脱脂剤を用いて洗浄を行います。
油分が残った状態で次工程へ進むと、薬液が均一に作用せず、アルマイト皮膜にムラが発生する原因となります。そのため、脱脂工程では温度や処理時間を適切に管理し、表面を清浄な状態にすることが求められます。
脱脂後は「水洗」を行います。水洗の目的は、製品表面に残った脱脂剤を除去することです。薬液が残留すると次工程の薬液に影響を与え、品質低下や薬液の劣化を招くため、十分なすすぎが必要となります。
次に行われるのが「エッチング工程」です。
エッチングでは主に苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を使用し、アルミニウム表面をわずかに溶解させます。これにより自然酸化膜や微細な傷、加工跡などを除去し、表面を均一な状態に整えることができます。
また、光沢を抑えた梨地(なしじ)仕上げを得ることも可能になります。ただし、処理時間が長すぎると必要以上にアルミが溶解し、寸法変化や表面荒れの原因となるため注意が必要になります。
エッチング後には再度水洗を実施し、表面に付着したアルカリ成分を除去します。
その後、「スマット除去(デスマット)」工程へ進みます。スマットとは、エッチング後にアルミ表面に残る黒色や灰色の化合物、主にアルミ合金中に含まれる銅やケイ素(シリコン)亜鉛、マグネシウムなどの成分で構成されています。このスマットを除去するために、硝酸などの酸性溶液を用いて処理を行います。スマットが残ったままでは均一な酸化皮膜を形成できず、外観不良や性能低下につながります。
スマット除去後は最終水洗を行い、表面に残った酸成分を完全に洗い流します。この工程まで完了すると、アルミニウム表面は清浄かつ均一な状態となり、陽極酸化処理に適した条件が整います。その後、硫酸などを用いたアルマイト処理が実施され、目的に応じた酸化皮膜が形成されます。
このように、前処理工程は「中性脱脂→水洗→エッチング→水洗→スマット除去→水洗」という流れで進めます。
前処理は単なる準備作業ではなく製品の品質を左右する重要な工程であると東信工業では考えており高品質なアルマイト皮膜を得るためには、各工程での薬液濃度、温度、処理時間および水洗管理を適切に行うことが不可欠になってきます。また前処理を確実に実施することで、美観に優れ、耐食性や耐久性の高いアルマイト製品を安定して製造することができます。


























